ニキキョ

今更ブログ 映画や音楽で気になったことを備忘録的に書いていきます。

「風立ちぬ」を見て感じたこと

宮崎駿の最新作「風立ちぬ」を見た。

すごい映画だった。なんだか心が動いた。それが何なのかを悶々と考えていた時に、ネットでは、こういう見方があったのか!というようなブログがあった。
http://blog.goo.ne.jp/sombrero-records/e/fc082b472586d1994a96b6b975fdcece
確かにそうかも、鋭いなあ、と思う反面読み進めていくうちに、あれ?「風立ちぬ」ってそういう映画なんだっけ?と感じるようになった。

それで映画見終わった自分の中の気持ちを整理しようと思い、パソコンに向かった次第。
内容ネタバレやけども、ただの備忘録みたいなものです。もしもたまたまここへたどり着いた方がいれば、暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。
見当違いだったらすみません。


この物語は零戦を産んだ天才設計士、堀越次郎の半生。これまでの宮崎駿作品とは違いファンタジーではないので、比較的淡々と描かれていく。

物語の大きな転機は、次郎が進めていた戦闘機のテスト飛行が大失敗に終わり、傷心の避暑旅行で起こる。

それはその昔関東大震災で助けた女性「菜穂子」との再会である。
菜穂子とその父親の3人で再会の会食をしようと思った矢先に、菜穂子は高熱にかかる。
(淡々としていた映画が急に胸キュン展開になるかと期待してたら、高熱にかかるのでとても歯がゆい思いをした!)

容態が気になる次郎。彼は菜穂子の部屋めがけて、紙飛行機を飛ばす。そこで二人は紙飛行機を通じて心をつなげていく。

次郎はこのやり取りを通じて、テスト飛行の大失敗の傷を癒し、飛行機設計への英気を取り戻していったのだと思う。
紙飛行機の形状も次郎が思い描く理想の飛行機に似ているように見えるのは気のせい?

そして菜穂子との交際を父親に認めてもらう。彼女が結核と知りつつも。
当時の結核というのはそれこそ「死を覚悟」せねばならない病のはず。そんな菜穂子を受け入れ、自分が結核に感染することなどおかまい無しに接吻を繰り返す次郎。

彼は生きる意味を飛行機だけではなく、菜穂子にも見いだしたのだろう。
遠距離で交際をしていても、菜穂子の容態が悪くなると、大急ぎで彼女のもとへ駆けつける。そして大急ぎで職場へ帰り、飛行機の設計はきっちりとやっていく。

求める二つのものを両立させるなんて面倒なことはせずに、葛藤してどちらかを切るのが物語として一番わかりやすい。だがそれで次郎がそして菜穂子が幸せになれるなら、それは陳腐なファンタジーではないか?
この時代、仕事を辞めれば菜穂子を守れない(なぜか特高警察からも狙われいるし)。そして次郎を再び飛行機作りに向かわせる根本となった菜穂子と別れることなんてできるわけがない。
美しい飛行機を作りたい。妻と少しでもそばにいたい。という矛盾。
あっちを立てればこっちが立たずという中、次郎は生きている。これって僕たちの社会でも結構起こってる。
(ちょっと話がそれるけど、大体においてこの物語の人物は矛盾と戦っている。「俺たちは良い飛行機を作りたいだけで、武器商人ではない」と本庄も言っている。これこの映画のキーワードかも?)

菜穂子は結核のために高原病院に移されてから、次郎に会えなくなるのではと、不安になり衝動で次郎に会いにいく。
そして次郎は決断する。菜穂子をそばに置くことを。このとき菜穂子と一緒に「生きていく覚悟」とおそらく「死ぬ覚悟」を決めたのだと思う。(結核の感染を気にしないのもさることながらラストの流れでもそう推し量れる。)次郎は飛行機と菜穂子の間で生きているから、妹から罵倒されようとも大切に一日を生きているとのたまえる。


終盤、次郎は理想の(美しいと呼ばれる)戦闘機を完成させた。それと同時に菜穂子は「美しい容姿のままでここから去りたい」と言い残して高原病院へ戻っていった。
彼が愛した二つ、戦闘機は見知らぬ土地で残骸となり、菜穂子は遠く離れた高原病院で息を引き取る。
これは決して偶然ではないはずだ。

そして夢の中、自分の作った戦闘機の残骸のそばで絶望する。そんな折、菜穂子が現れて、次郎に言い続ける。「生きて」と。次郎はやはり死を覚悟していたのだと思う。
そしてその思いは菜穂子の言葉で解けていく。

 

色んな矛盾をはらみながらも覚悟を決めて時代を生きた二人を取り巻く物語が、とても残酷でそして悲しくてでもなぜか愛おしかった。
僕としては味わったことのあまりない気持ちになり、深く心を衝かれた。次郎の美しさに対する執着という狂気もきっとこの物語に含まれているんやろうけど、それは主題ではないのかな、と個人的には思う。
なんか、文章にしたら悶々がちょっと腑に落ちた!でもまだ悶々となにか残ってる!
他の人のレビューも色々読んでみよ。